(出典:大島弓子「綿の国星」2巻 白泉社文庫)
お金とらないで売るの。
そうだね、それがいいよねって無条件に言いたくなるこの感じは何?
ああみんなみんなこんなふうにお買い物できたらいいのに。キモヲタもマジヲタもみんなみんな。
さていよいよ「本人直筆アナタの名前とサイン入りシリアルNo.付き特大写真パネル」の締め切りが明日に迫ってまいりました。これを入手するには明日中に2万円振り込まねばなりません。午後3時までに郵便局に駆け込み、番号札をペロンッとむしり取り、老人に混じって椅子に座る。やがて番号が呼ばれたらサッと立ち上がり、あら、この人、ハロプロなんかに2万円振り込むんだわ、と思われながら財布を開くのだ。いや、2万円じゃすまない可能性もある。
「ジュンジュンとリンリンが亀井絵里の案内で東京観光に出発!収録予定時間50分」ってFC限定DVDも気になる。亀井の案内だよ?見てぇ。いや、まずは特大写真だ。「ポスターよりもさらにリアル!」って通販パンフの宣伝文句。でもそのリアルじゃないんだ。今俺が直面しているリアルは。
ある日のUFA、会議室。
「んじゃ、吉澤、サイン500枚よろしくな。午後いっぱいでだいじょぶ?2日にわける?」
「や、いけると思いますよ」
「100枚ずつ箱に入ってるから。ペンこれで。リスト、これ」
「はーい、、、、このへんに名前でしたっけ?」
「そう。そのへん。飲み物とか要る?」
「あ、じゃあコーヒーっていうかこぼすとアレなんでやっぱペットの水かなんかあればいいです」
「じゃ買ってくるわ」
「この定規、何ですか?」
「あ、それ?リストの上に置いて、書いたらズラしてくとわかりやすいでしょ」
「あーはいはい、なるほどね」
「わかんない字とかあったら言ってな」
「はーい」
1時間後
「ど?休憩する?」
「ぐわー。けっこー大変っすねぇ。字とか間違えちゃいけないし」
「だよなぁ。先にサインのとこだけバーッと書いて、あとから名前だけバーッと書く?」
「んー、その方が早いですかねぇ?」
「早いのは早いと思う。テーブルに並べて置くからさ、流れ作業的に動きながら書けば?」
「あー、立って書くってことですか?」
「そのほうがラクかもよ」
「や、でも、やっぱ、一枚ずつ座って書きます」
「そう?」
「なんかその方が落ち着くし」
「そうか。ならそれで」
4時間後
「だぁあああっ!あと100枚?」
「なんか食うか?」
「や、いいです。ちょっとストレッチしていいっすか。うおーー」
「名前とかあっちで確認してるから何かあったら呼んでな」
「はい。ていうか、これ・・・・」
「どうした?」
「一枚一枚、ファンの人に届くんですよねぇ」
「・・・そうだけど?」
「や、なんかすげーなぁと思って」
「・・・・・」
「こういうふうな名前の人がいるんだなって。そんで応援してくれてるんだなって」
「なに当たり前のこと言ってんの?」
「や、まぁ、当たり前なんですけどぉ」
「・・・・・」
「手紙みたいだなぁって思って」
「手紙?」
「あたしからぁ、ファンの人への。なんか書いてる時、そんな気持ちがしたんですよね」
「・・・・・」
「そんじゃ、あと100枚、一気にいきます!」
みたいなこと言うに決まってるんだ。
ひとりひとりに、手紙みたいな気持ちで最高の集中力でペンを持つのさよっすぃは。
うぉおおおおおおおっ。
前回の日記で「困ったその1・何の価格かわからない」って書きました。
それはこの価格が「写真の値段」なのか「サインの値段」なのかわからないって意味でした。
でも、俺は考えて、そのどちらでもないって思った。
これは「証拠の値段」なんだよ。
何の証拠?
独占の証拠。
吉澤が間違いなく俺のことを、俺のことだけを考えた時間があったという証拠なんだこれは。
俺さぁ、この写真、絶対部屋に飾らないと思うわけ。
押入れにしまっておく。あるだけでいいの。あることに意義があるの。
卒業証書と同じ。吉澤が俺の名前を見つめて、間違えないようにって思いながら一生懸命に書いた数秒が確かに存在した。見えない爆レス。その証明書。単なる写真でもサインでもない。
そんなわけで郵便局へと走りだしたくなっている俺なわけです。
独占欲。
欲しい、と思えることが、けっこー幸せ。
「困ったその3・欲しい・欲しくないとは別の購入理由がありうる」って前回書いたが、これは平たくいうと、「俺は吉澤に貢ぎたいのか?」っていう問題意識でした。
欲しいものを欲しいから買うっていうことと、欲しくないけど貢ぎたいから買うっていうのは別のことじゃん?俺的には常に前者でありたい。後者はなんか、失礼な気がするから。
前に狼に「ハロメンの口座がわかればもう直接お金を振り込みたい」みたいなスレと
「小春の写真を買いに小学生の女の子が10円玉握り締めてハロショに来てた」みたいなスレがあった。あれ誰か保存してないかなぁ。
お金の使い方としてこの2つってすごい象徴的だなと思った。
そんなわけで。
週末どーしよっかなぁ。自分の気持ちを見つめている。音楽ガッタス。武藤ってコは気になるのだ。
お台場は一度は行きたい。
吉澤がいたらうれしいが、いなくてもいい。
俺が吉澤をどんなに好きか実感できるだろうから、それもまた切なくもうれしい俺の夏休みなのさ。