これから話すのは僕の話さ。
君が僕のことウザいって思ってたとしてもOK、よかったら聞いてくれないかな。
外はまだ寒いんだろ?
ねぇ、井の頭公園の池、知ってる?あれが凍ったら鴨たちはどうなるんだろう?
なぜ誰もそれを心配しないんだろ?そう思わない?ええと、僕の名前はホール・・・じゃなくてp。
くだらない前置きはこのくらいにして、くだらない2月17日の話を始めるよ。
あの日はライバル高校とのフットボールの試合、じゃなくて、フットサルの試合、でもなくて、音楽ガッタスのライブの日だった。昼にスタジアムに入るつもりが、ちょっとした手違いで(実際僕はこればかりさ!高校2年の歴史の授業でもさってこれはまた別の機会にね)、スタジアムには夜に入るしかなくなったんだ。夜はデートの予定だったのにキャンセル。後で彼女の機嫌をとるのが大変だったよジーザス。でもデートを優先させるわけにはいかなかったんだ。僕はどうしてもその日、スタジアムでやりたいことがあったから。
席は2階の奥。始まる直前、金髪の男たちが列になって入ってきてさ。
正直「アチャー」って思ったよ。だってさ、やつらガッタスの、そう、Gatasのコーチだぜ。Gatas Brilhantes HPの!あの輝ける子猫ちゃんたちの!正真正銘Gatasの汗と涙を知る男たちだぜ!その男たちに「音楽ガッタス」だの「見ざる祝ざる」だの恥ずかしいじゃん。見られたくないじゃん。そのうえアンコールで「ガッタスコール」を聞かせるんだと思ったら僕もういたたまれなくてさ、ダッシュで彼らに謝りに行こうと思って飲みかけのペットボトルの蓋をキュッと締めたのさ。そしたら手が滑ってボトルが床に転げてさ。あわててるうちに開演。何をやってもうまくいかない日っていうのはあるんだよ、ねぇ、君、それ知ってた?
開演。見とれた。吉澤かっけー。頭の羽根、きれい。
柴田がさ「なんだか不思議な感じでした。ガッタスが歌ってる。そして、私はそれを客席から見てる。」ってブログに書いてたけど、え?そんなことまで書いてない?あーごめんごめん、クスリのせいかな、あの続き、僕にはそう見えちゃってさ。柴田が不満めいた気持ちを感じてたに違いないとか言いたいんじゃないよ、まぎらわしくてごめんね。悪い意味じゃない。本当に「不思議」だったんだと思うよ。幻みたいな夢みたいな。そういうふうに僕も感じたってこと。
私服風衣装もよかった。BE ALLRIGHT?5人ずつ左右にゆるく2つのグループに分かれてちょっかい出し合うような群舞、「ウエストサイドストーリー」の喧嘩のシーンみたいだった。そう思って見てみると、その後の赤いタキシード風の衣装も、冒頭の衣装も古き良きアメリカのエンターテイメントの香りが微かにするだろ?いやまったく、この国のエンターテイメントときたら!何でも消化しちまうんだ!
エッグでは武藤がいちばん重心の移動がスムーズにできてて、ポテンシャルを感じたな。ピースでちゃんと斜めになってたエッグって武藤ぐらいだったよね。まのえりってコは正直いまいちだったよ。あ、そんな目で僕を見ないでくれ、君だってあの場にいたらそう思ったと思うよジーザス。女のコってさ、かわいいと思ってしまうとそれに頼りすぎちゃう系のコっているけど、あのコ、そうならないといいな。ねぇ、君だって心配だろ?僕は首をグラグラさせながら話すコって苦手なんだ。ハローのコには多いけど。あのグラグラから「かわいいあたしを怒らないで」ってメッセージを感じてイライラグラグラ。
それにしてもさ、ウエストサイドストーリーのとこ、ほんとカッコよかったんだよ。
君にも見せたかったな。吉澤兄貴のそばでちょこちょこ動く武藤が弟分みたいでさ。いや、実際のところ、武藤の「弟力」はすごかったね。吉澤兄貴にチンピラ武藤っていう組み合わせ。この街じゃあちょっとしたワルとして知られてんのさ。そして僕はそのワル2人をかわいがってる「インテリやくざ」。吉澤と武藤が気の弱い男をカツ上げしてると、
キキッと黒いベンツが止まる。窓がゆっくり開いて、黒のスーツに銀縁メガネ、オールバックの男が顔を出す。僕さ。そして言うのさ。
「いつまで雑魚相手にしてんだ吉澤」
「え、あ、pさんじゃないっすか。おヒサブリっす!」
「お、が余計だろ吉澤」
「サーセンw」
「その言い方はやめろ吉澤。そのちっこいのはなんだ?」
「あ、こいつ、むっちぃっす。ほら、pさんだ、挨拶しな」
「・・・・・こ、こんにちは」
「や、こいつあんまり日本語得意じゃないんスよ」
「そうか。むっちぃ、何かおもしろいこと言って俺を笑わせてくれないか」
「ほへ?」
「pさん、こいつまだpさんを笑わすなんてそんなこと無理っすよ」
「そうか、、、俺は、、、、もう随分笑ってなくてな、、、俺は、俺は、笑いてぇんだよ、吉澤っっっ」
「は、はぁ、、、」
「や、悪かった、忘れてくれ。そんなことより吉澤にちょっと手伝ってもらいたいことがあってな」
「今度はどんな仕事で?」
「吉澤、お前あの時、俺のためなら何だってするって言ったよな」
「はい、pさんに助けてもらったからこそ、今こうしていられるんで」
「その気持ち、今も同じか?」
「一生変わらないっス」
「そうか、、、吉澤、俺に命預けてくれ」
「・・・・」
「イヤなのか?」
「いえ、イヤじゃないっス。どうせ拾った命、喜んでpさんに預けます。ただ、、、」
「ただ?」
「惚れた女がいるんで挨拶だけ行っていいスか」
「惚れた女?まさか、お前まだ石川組の」
「・・・・」
「吉澤っっお前、ウチの組と石川組の因縁、わかってて」
「わかってますっわかっててもどうしようもないこともあるんです」
「吉澤、、、」
ごめんごめん、僕、空想っていうか妄想っていうかそういうのやっちゃうタチでさ、だから今こんなとこにいるわけなんだけど、わかるだろ?僕の癖なんだ。まぁそんなふうにさ、楽しいステージだったんだよ、アンコールまではさ。
アンコール。
僕は、そのアンコールが原因でここに来るハメになっちゃったんだ。
ガッタス! パパパン(手拍子) ガッタス!
そのパパパンのとこで僕はさ、「おんがく!」って言ってた。
パパパンのトコのほうが少しでも声が響くかなと思って。
恥ずかしかった。心細かった。馬鹿だなぁと思った。ていうか自己満足なのはわかってた。前の日記のコメントでは「がっつりやってきました」なんて書いたけど、声は、本当は小さくなってしまうときもあった。
寄り添う声のない声は。
でも、やめなかったよ。アンコールの間中、パパパン、のとこは「音楽!」、ガッタス!のとこは一緒に「ガッタス!」って、ずっと。コーチたちに、せめて届けと思ったけど、何列も隔てていたからね。無理だったと思う。何もかも無理だった。僕は敗北感とともに校歌を聴いた。これだけはコーチに聞かせたくなかったなぁ。コーチはぜんぜん気にしてなかったと思うけどあくまで僕としてはね。
それで、最後の最後のMCで、僕は息をのんだ。
吉澤が身振り手振りで、ライブ終盤の体力的なキツさをおもしろおかしく説明し始めた。
「たとえばフットサルの試合で8分ハーフで6分40秒ぐらいのとき?あーつらいなぁでも今戻らないとやられるーって思ってターーッと戻っていくわけですよ、その時みたいなキツさ」
なんでいきなりフットサル?
唐突。
そして僕は確信した。思いつきや偶然じゃない。吉澤はコーチがいるからこそ、この例え話をした。
ライブレポは読んでなかったけど、フットサル絡みで最後のMCをしたのは絶対きょうの、この回が初めてだと僕は直感した。だってさ、やっぱなんかちょっと不自然だったもん、テンションの高さとか話の長さとか。いつもフットサルのMCしてて、今回のネタはこれって空気じゃなかったもん。それはそれで悲しいけどね。フットサルの話題を唐突と感じてしまうことが悲しいっていうか切ない。
吉澤の課題。フットサルと音楽ガッタスの距離をどうするか。
コーチがいないときは気にならなかったのかもしれないけど、コーチが見るとなると、フットサルと音楽ガッタスの距離が気になってしまったのだろう。
フットサルの度合いを高めなきゃ。このままではフットサルのコーチに失礼、と言ったら言い過ぎかもしれないけど、ともかく、ライブをこのまま終わせるのは避けたい、という気持ちが吉澤に生まれたんだと僕は思ったよ。
早口になってしまったのは、笑いをとる話し方のせいだけでなく、音ガタとフットサルのつながりの薄さをとりつくろおうとする気持ちの揺れもあったと思う。
笑かしMCに込められた切ない乙女ごころ、いや、ガッタスごころ。
僕はそのガッタスごころに胸を打たれた。
「あぁ吉澤は偉いなぁ」と思った。
と同時にようやくわかった。
そうなんだ。僕はライブの間ずっと「楽しいなぁ」よりも「えらいなぁ」って吉澤を見てたんだ。
見とれていたけど楽しんでいたわけじゃなかった。
名古屋にも大阪にも行かない。17日が僕のラスト。last GOODSAL。
2ndツアーとかあっても行かないのかって?
そんなのわからないさ。でも、ここ、外出許可がうるさいっぽいんだ。夢を見ないクスリが効いてくるかもしれないし。
あぁ、でももし、こんど音楽ガッタスのライブに行ったらアンコールどうしようって、それはずっと考えてた。
ねぇ、君だったらどうする?
僕?
僕は決めたよ。
僕は吉澤のガッタスごころに呼びかける。
吉澤の「ガッタスを想う心」にエールを送りたい。
目の前に見えている人々じゃなく、吉澤の中にある見えないものへ。
吉澤が「ガッタス」と名のつくものを大切に想い続けることができるように。
そのためなら、僕は「ガッタス!」「ガッタス!」と叫ぶよ。
祈るように。
とても小さな声で。
もし君が音楽ガッタスのライブに行くのなら、僕のぶんまで叫んできてくれないかな?
約束は嫌いだからしないよ。約束なんていらないのさ。
ねぇ、君も僕をおかしいと思うかい?